河本の実験室

河本が作ったものを紹介するブログです。こっち(https://kawalabo.blogspot.com/)から移転してきました。ポートフォリオ: http://俺.jp

病室で作った16個のもの全部

2021年の前半は重めの病気を患い、4ヶ月の闘病生活を送っていました。治療に苦しみながらも、少しでも楽になるためのものや単純に興味本位のものを沢山開発しました。今週から(多分)一旦仕事に戻れることになったので、作ったものを全部記録します。

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1. 点滴したまま着脱できる上着

健康だった頃は考えたことも無かったのですが、点滴をつけたままだと上着を着脱できないんですよね。抗癌剤治療は朝9時から深夜2時まで点滴が刺しっぱなしだったので、気軽に温度調整ができなくて困りました。そこで、袖を面ファスナーで開閉できるようにすることで、点滴をしたままでも着脱できる上着を作ってみました。

入院中はずっと助かっていました。ユニクロとか作ってくれないかなー。 

2. 虚構じゃないbot 

twitter.com

最近虚構新聞かと思うような現実のニュースが増えてきたような気がします。そこでTwitterや、はてなブックマークで「虚構新聞かと思った」のようなコメントが沢山ついたニュース記事を自動的にピックアップして紹介するbotを作ってみました。

運用して3ヶ月、話題になった虚構っぽいニュースを的確に拾ってくれて、割と人気アカウントになっています:

ただどうしてもコロナ関係の少し暗いニュースが多くなるので、もっと幅広く拾えるようになるといいですね。

3. 寝ると止まるpodcast

病室で本を読むのも辛い時は大体podcastを聞いてたんですが、寝落ちすると次回巻き戻すのが面倒臭い問題に悩まされていました。そこで、Fitbitが睡眠を検知したら自動的にスマホの再生を止めるアプリを作ってみました。

使ってみると:

  • 睡眠が誤検知されて起きてるのに止まってしまわないか不安になり、余計に動いてしまう(ので寝られない)
  • いつ止まるかドキドキしているせいで寝られない
  • 寝る直前に聞いてたことをあまり覚えてないので、結局10分ほど巻き戻すことになる
  • でも朝起きてちゃんと止まってると嬉しい

という感じで、まだ実運用に耐えるには改善が必要そうです。そのうちリリースしたいと思います。

4. COCOA再起動アプリ

play.google.com

COCOAを毎日再起動させるだけのアプリです。朝のニュースでAndroid版COCOAは一日一回再起動が必要という(ひどい)ニュースを聞き、数時間で作りました。(最近のCOCOAは再起動しなくても良くなったそうです。)

厚生労働省のマークと再起動のアイコンをミックスさせた少し怪しいアプリアイコンにも関わらず、Playストアがちゃんと審査通してくれました。少し驚きです。

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5. brbrBeat(ぶるぶるビート)

brbrbeatdemo.web.app

このブログを書くまですっかり忘れてた、一日で作ったSNSです。画面タップでリズムを作成・共有し、人のリズムをスマホの振動で感じて楽しむ新感覚振動投稿SNSです。「勉強が捗るリズム」とかを投稿しあったりして、スマホをブーブー言わせて感覚を楽しむ体験がしたくて作りました。朝3時のテンションで作ったら全然面白くなくて、友達と遊んだあと存在を忘れてました。たぶんリズム作成能力のある人が遊んでくれたら面白くなるんじゃないかと思います。誰かチャレンジしてみてください。

6. OpenKen

open-ken.web.app

一時退院中に家族に見守ってもらえるように作った、フルオープンの生活見守りサイトです。装着したFitbitやスマホから位置情報や活動状態を収集し、リアルタイムでダッシュボードで表示します。我が家では、これを表示させたタブレットをリビングに飾っていました。

せっかくなので全世界に生活をフルに"open"にしたらなにが起きるか実験しようと思い、誰でも閲覧できるようにしてみました:

  • 数週間後でも眺めてくれてる人がちらほらいました。運動してると閲覧数が上がるので、なんか面白いらしいです。
  • 20人ぐらいに位置情報を見守られながら散歩すると「見られてる感」が結構強いです。必要以上に歩くの頑張ってしまいます。
  • 特に危ないことは無かった。

 

7. 寝てる人の割合分析 

github.com

祖父江慎さんの疑問「人間の一番多い%が寝ていた瞬間っていつだろう」が面白かったので、少し観点を変えて「一日のなかで一番多い%が寝ている時間」を計算してみました:

日本時間6時には世界の79%が寝ている、逆に21時には世界の98%が起きているという結果に。(もとのツイートからは計算間違いや前提条件を変えているため少し値が違います。)仮定は少し乱暴(人は22時から6時まで寝る想定)ですが、そんなに大きく実情と違わないはず。ある程度偏りはあれど、人間は世界中に遍く分散しているイメージがあったので、ここまで極端な結果は意外でした。世界中の人が参加するイベントは夜9時に開催しろってことですね。

こういう、昔から存在するデータ(人口分布データ)を違った観点でみることで新しい知識を生むのはすごく楽しいですね。

8. Stick Figure Recorder / 棒人間メイカ

stickfigure-recorder.web.app

棒人間のgifを簡単に大量生成するために開発した、棒人間動画「録画」サイトです。

ウェブカメラから取得した画像を骨格情報に変換し、棒人間として表示してgif化しています。GoogleのPoseNetを使うことで、完全にブラウザ内で完結させています。

作ったgifをアップできるGalleryの作品を参考に、是非自分の棒人間gifを作ってみてください。

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9. 段階的に難易度を変えられる時計

kenlab.web.app

時計に苦戦している子供のために作った、段階的に難易度を変えられる時計です。

既存の練習用時計は視覚補助の種類が少なく、子供の習熟度に合わせて難しくしていけないのが不満だったため、こういうのを作りました。また、視覚補助をon/offの2値ではなく連続的に表示させることで、まるで麻の苗木を毎日飛び越えるように負担少なく次のレベルに移行できると思っています。

多分アプリにしたら売れると思ったんですが、面倒なのでソース含めオープンです。

10. みんなの忘れたニュース(再)

twitter.com

昔作った「みんなの忘れたニュースbot」を完全に作り直しました。色んな事情で半年ほど寝かせていたのですが、まだフォロワーが5万人以上いて再開の声が多くあったので、刷新することにしました。前バージョンの一番の不満が「何のニュースか分からない」ということだったので、一つ一つのニュースに関連ツイート含め紹介するページを自動生成し、Tweetからリンクするようにしました:

11. 富士山が見える建物マップ

wherecaniseefuji.web.app

こちらで既に解説していますが、オープンの地図データを使って、都内で富士山・東京タワー・隅田川花火が見える場所を探せる地図を作りました:

12. 絶対右折したくない検索

no-right-turns.skip.work

自分は完全にペーパーなのですが、どうしても運転しないといけなくなった時のために「極力右折を避ける経路を検索してくれる地図」を作ってみました:

半分冗談で作ったページですが、実際に米国UPSは配達車の左折(日本でいう右折)を避けることで事故数や移動時間を減らしているそうです。また警察庁統計でも左折車による歩行者死亡事故の6倍の事故が右折車によって発生していることがわかっています(右折・左折件数毎のデータが無いので結論つけにくいですが。)元々僕は運転なんて殆どの人間がやるには高度・危険すぎると思っているので、自動運転が来るまでこういうハックで少しでも安全を確保するのはアリなんじゃないかと思います。

本業(Googleマップ)にだいぶ近いので危うい感じもしましたが、多分弊社が絶対に製品化しないだろうと信じて作ってみました。

13. ARタイムラプス

植物の定点観測を、固定カメラでやるのではなく、スマホカメラをARで位置合わせしてやるという実験です。

まあ当然ながら固定カメラのほうが安定してますね。ちょっと実用には耐えなそう。

14. 東京断面テープ

日本語で「スカイライン」ってあまり聞き慣れないと思うのですが、観光地図とかでよく見る街のシルエットのあれです:

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昔からこれが好きで、色んな角度から自動生成できたら面白いんじゃないかと思ってました。というわけで、国土交通省のオープンデータPLATEAUを使って作ってみました:

せっかくどんな角度でも作れるようになったので、山手線円周のスカイランをマスキングテープにしてみようかと思います。

15. 空を絵画に持ってくる

今の入院ってコロナの関係であまり病室も出られないし、来客も禁止されてるしで、代わり映えしない窓の外を眺め続けるしかありません。僕は2ヶ月間一つの部屋に居続けて、気が狂いそうになりました。そこでこうやって絵画の空を切り出して窓に貼り、実際の空を透過して見えるようにしたら空の変化に気づけて少し気が紛れるのではないかと思って作ってみました:

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2ヶ月間眺め続けて少し発狂した風景

16. 自分がいつ呼ばれるか予測するページ

kenlab.web.app

病院は待ち時間が多いですよね。殆どの時間は受付番号とのにらめっこで終わります。番号が呼ばれる早さから自分が呼ばれる時間を予測することは誰でもやると思うのですが、暇すぎてこれを半自動化してくれるページを作りました(病院で自分の番を待ちながら):

おしまい

治療中(特に抗がん剤投与中)は「本業は休み」「入院中のため子育てができない」「色々新たな不都合に直面して開発のネタが出てくる」という、趣味の開発に非常に適した条件でした(治療が辛いことを除けば)。そのためこの4ヶ月間を振り返ると、治療よりも「楽しく色々作れた」という記憶のほうが強いぐらいです。この4ヶ月間楽しく開発できたのは、治療を耐えられるようにしてくれたお医者さん・看護師さんたち、家を守って色々サポートしてくれた家族、僕が作ったもので遊んで褒めてモチベーションを維持してくれた友人たちのおかげです。とりあえずは一旦生きられることになりました。ありがとうございます。