「見せたい人にしか見えない注意書き」を色々作ってみた
見せたい対象者以外には見えない注意書きを一人ブレストして5つほど試作してみた、という話です。
- なんで?
- その1:フラッシュを焚くと怒る展示台
- その2:ヘッドライト無点灯だと怒る看板
- その3:撮ろうとすると怒るTシャツ
- その4:搭乗時間が近づくとパニクる搭乗券
- その5:逆走しようとすると怒る通路
- 他にも・・・
- さいごに
なんで?
注意書きが駅や公園や道路などの公共空間に溢れかえっているのが最近気になっています。特に、多くの注意書きは自分には関係ない or 既に知っている事であるため、本当に見ないといけない内容が埋もれてしまっています。
Web広告の分野では、興味のないバナー広告を見すぎるとBanner Blindness*1 が発生することが知られていますが、同じように注意書きも意識から排除してしまっている自分に気づくときがあります。
ならば、注意書きもWeb広告と同じように個々の利用者にとっての関連性を向上させることで、(1)伝えるべき注意がもっと伝わるようにしつつ、(2)注意書きの総量を減らして空間の外観を守ることができるのではないしょうか?つまり、見ないといけない人しか見えない注意書きを作ることが出来ればいいのでは?
そんなことをボーッと考えていたら色々なアイディアが浮かんだので、簡単に試作してみたものを紹介していきます。実現性の薄いものも含まれますが、考えるきっかけになれば幸いです。
その1:フラッシュを焚くと怒る展示台
美術館、観劇など、フラッシュ撮影が禁止されている場所は沢山あります。展示物や体験への悪影響を考えての切実な注意書きですが、個人的には美しい展示室内に「フラッシュ禁止」マークがいたるところに掲示されることによる外観への影響が気になることがあります。そこで、せめて知ってか知らずかフラッシュを焚いてしまった人を叱り、二回目以降を妨げる方法としてこんなのを作ってみました:
美術館とかが「フラッシュ禁止」の注意書きだらけで目障りなので、フラッシュを使うまで見えない注意書きを作ってみた。一見ただの黒いディスプレイだけど、フラッシュ炊くと「NO FLASH💩」と出てくる。こういう「ルールを破った人にしか見えない注意書き」の作り方を考えると色々出てきて面白い。 pic.twitter.com/f5mJ85uIun
— Ken Kawamoto(ガリのほう) (@kenkawakenkenke) July 7, 2019
黒い再帰反射シートの上に文字を切り出した黒いマスクを敷くと、文字が見えなくなります。(ぴったり合わせて塩ビシートをかぶせると、ほぼ見えなくなります。)
それをフラッシュ撮影すると、文字(「NO FLASH💩」)だけが光って見えるという仕組みです。
こうすれば、ルールを守っている人からは黒い台にしか見えない一方、ルールを破ってしまうと明確に怒られ、しかもインスタ映えしない写真に変えてしまえます。
また再帰反射材を使っているおかげで、他の人にとっては体験が壊れることなく「ただの黒い台」に見え続けます。
もちろんTwitterコメントで指摘されているように、一度目のフラッシュを止めることも大事です。しかし美術館の入り口で「フラッシュ撮影は禁止です」と伝えた上で、それでも撮影してくるような困ったさんは、おそらく既存の「フラッシュ禁止」サインでは防げません。このように「ルールを守っている人の体験は壊さず、」「ルールを破ったら思いきり怒る」注意書きのほうが、結果的に効果が出ると思うのでしょうがどうでしょう?
その2:ヘッドライト無点灯だと怒る看板
再帰反射材を逆に使って、「ライトをつけていないと叱る看板」を作ってみました。通常の「ヘッドライトつけろ!」看板は(他の注意書きとの兼ね合いから)トンネルに沢山つけることはできませんが、これならば無点灯の人だけにターゲティングして叱れるため、トンネル中にびっしり設置しても構わないわけです。
これ逆の発想で、ヘッドライトつけてない車にだけ『LIGHTS ON!』と表示される注意書き。ライトつけないといけないトンネルとかに掲示するといいよね。文字切り抜いた白い紙の下に黒い再帰反射材を置いてるので、ライトを当てると(ライト持ってる人にだけ)文字が読みにくくなる。 pic.twitter.com/5mcNVZFBHt
— Ken Kawamoto(ガリのほう) (@kenkawakenkenke) July 7, 2019
黒い再帰反射材の上に白い切り抜きマスクで文字を書くと、ヘッドライトをつけている人からは文字が白飛びして読めず、無点灯の人からは黒い文字が見える仕組みです。
なんかトンネル以外にも色々応用効きそうな構造ですね。
その3:撮ろうとすると怒るTシャツ
イベントとかで「今日は写真撮られるとまずいなー」っていう日、ありますよね。実はiOS/Androidの標準カメラはデフォルトでQRコードを読み取り、内容を画面上に表示させる機能があります。その機能をハックして、自分を撮影しようとしている人の画面上に任意のメッセージ(例えば「写真やめてね😘」)を表示させることを思いつきました:
じゃこんなのどうでしょう。スマホの標準カメラはQRコードを読み取って勝手に表示してくれるので、写真撮られたくない日にこういうTシャツ着とけば撮られる前に「写真❌です😘」と撮影者の画面上で注意してくれる。 pic.twitter.com/RdojVzBg7g
— Ken Kawamoto(ガリのほう) (@kenkawakenkenke) July 7, 2019
肉眼で見るとなんの変哲もないQRコードTシャツですが、スマホカメラで撮影しようとするとこんなふうに画面上に注意書きがポップアップします:
写真は撮る前に声をかけるのが礼儀ですが、これならば勝手に撮ろうとしてくる不届き者にだけ、少し強めに叱ることができます。スマホカメラ以外には無力ですが。
せっかくなのでこちらでオーダーできるようにしときました:
撮影者にだけメッセージを送れるのは、他にも色々応用が効きそうですね。例えばSNOWでかけてほしい修正パラメーターを指示したりとか。
その4:搭乗時間が近づくとパニクる搭乗券
未だに紙の切符は飛行機や地方の電車等で健在です。久しぶりに紙の切符を手にすると、出発時刻とスマホの現在時刻を見比べたりするのが意外とストレスになったりします。そこでこんなのをつくってみました:
久々に紙の切符を使うと出発時間と壁時計を交互に見比べるのすら面倒な自分に気づいたので、せめてこんなこと出来たらいいのにと作ってみた。出発時間が近づくと「ヤバイヨ!」と注意書きが浮き出てくる搭乗券。(180倍速) pic.twitter.com/av2Q8R0ZPW
— Ken Kawamoto(ガリのほう) (@kenkawakenkenke) July 15, 2019
「時間が経つと消えるインク」を使って搭乗時間に近づくと「ヤバイヨ」メッセージを表示させる切符です。
実際は消え方が温度など色々な外部要因に依存するため今の所あまりぴったり制御できていません。なので搭乗券のような重要な用途での実現は少し難しいかもしれません。
一方、「客に渡す物に少し経つとメッセージが現れる」という方式は色々応用効くんじゃないかと思います。持ち帰りの食品を食べ終わったころぐらいにパッケージングに「ちゃんと分類して捨ててね!」と表示したり。
その5:逆走しようとすると怒る通路
人の動線が複雑な駅って、矢印だらけですよね。自分の行き先とは関係のない矢印を全て視界から消せたら、どんなにすっきりするでしょうか。それを実現しようとしたのがこれです:
必要な人にしか見えない注意書きその5:進行方向が決まってる通路とかは、正しい方向に歩いてたら緑、逆走してたら赤く見えたりしたら駅も少しすっきりすると思うんだ。 pic.twitter.com/L5w8GBejiJ
— Ken Kawamoto(ガリのほう) (@kenkawakenkenke) August 3, 2019
紙をシャッター上に分割し、一つの方向から見ると緑色の矢印、反対方向から見ると赤色の「✕」が見えるようにしました。こうすることで、R2D2もダースベーダーも(自分から見て)右を歩けばいいことが明らかなので、ぶつからずにすみます。
レンズアレイを使えば2方向だけじゃなく多方向にも対応できますね。
通常の指示表示では、他の注意書きとの兼ね合いからせいぜい「矢印」や「右側通行などの文字」を表示することしかできません。しかしこの方式ならば、視覚的に「床全部を赤くする」といった思い切ったことができるため、非常に混み合った駅でもすぐに歩くべき場所がわかるという良さがあります。
他にも・・・
- タバコの煙を吐くと、プロジェクターの映像が煙のなかに結像して目の前に広告が出るとか
- 一定速度を超える(か下回る)と可聴域に入る不快音を作って、スピード違反をへらすとか
- 歩道を自転車で走っている人にしか見えない看板とか
色々作れたら面白いんじゃないかなぁと考えてます。
さいごに
それぞれ実社会に実装するには更にひとふた工夫必要なアイディアを、色々試作してみました。個人的に、電子工作・プログラミングでも(なんならもっとちゃんと)解決できる問題を敢えて「アナログな物の構造」だけで解決することに不思議な楽しさを感じました。
*1:広告っぽいものを全て意識から排除して「見えなく」なってしまう現象